報告)第13期初級登山教室 第5回講座「山の天気」

日時:2026年9月9日(水) 18:30 – 20:30 

 

場所:イノベーションフィールド国分寺
4階 第2セミナー室 

 

参加者:受講生26名 スタッフ22名 

 

題目: 「基礎から学ぶ山の気象」

 

講師:飯田 肇
[ 日本山岳会副会長 ,富山県立山カルデラ砂防博物館学芸課長 ]  

 

報告:

2026年の夏は、国内外で自然災害が多発、地震に酷暑、長雨や豪雨、台風や線状降水帯など、タイムリーな講座となりました。受講生はもちろん、スタッフの期待も高く、当日は、たくさんの出席がありました。

今回は、日本山岳会副会長で富山県立山カルデラ砂防博物館の飯田肇(いいだ はじめ)氏を講師に迎え、「山の天気」についてご講義いただきました。飯田氏は、ヒマラヤ氷河学術調査隊、カンチェンジュンガ登山隊、ナムチャバルワ登山隊などに参加され、氷河や積雪・雪崩、気象の調査研究をされてきた方です。2012年には、日本にも氷河が存在することを確認されたことで、有名です。

 自己紹介のあと、7月中旬でも雪が残る剱岳の画像が紹介され、楽しい雰囲気で講義が始まりました。「山の気象は簡単ではない」「山の風は地形次第」で、登山の危険要素の多くは気象に関わるものであること。さらに、天気は西から変わること、標高の高い山は気圧が低く酸素が薄いこと、山では平地よりも天気が急変しやすく、風が強く気温も低くなることなどが説明されました。気象遭難の三大要素は「①気温 ②風 ③降水」であり、低気圧の通過とその後の寒気で天気が荒れること、遭難の大半は稜線上で起こること。防寒・防風・防水が大切であると力説されました。山の高さと気圧・酸素濃度の関係や、雲の仕組み、温帯低気圧の構造、上層の気圧の谷、500hPa高層天気図、観天望気、積乱雲と雷、鉄砲水(沢の増水)や土石流の前兆現象、スマホを利用した雨雲レーダーの有効活用などについても、具体的かつ丁寧に解説いただきました。
以下に、目安となる数値を示します。

⚫︎気圧と酸素:標高2000mで平地の4/5(酸素量82%)、標高5500mで平地の1/2(酸素量60%)

⚫︎気温:標高が100m上がるごとに0.6度下がる。海抜0mで20度でも3000mの山頂ではわずか2度。

⚫︎体感温度:風速1m/sごとに体感温度が1度下がる。

⚫︎風速:10m/sはやや強い風、20m/sは向かって歩けないほどの強い風。

⚫︎雨量:1時間に10mmはやや強い雨、20mm以上はどしゃ降り。

これらの目安を体感として覚えておき、空を見上げて雲を観察し、風向きや雨の強さを肌で感じることで、危険な兆候を察知して自分自身で判断できるようになります。受講生のみならずスタッフも熱心に聞き入っており、自分自身、学生時代よりも集中できたと感じました。

出発前や登山口での気象確認はもちろん、山行中も1時間おきくらいに天気を推測することが必要。デジタル機器の活用は必須ですが、山中でスマホが使えるとは限りません。また、山の天気は急変するため、観天望気だけでは対応が間に合わないこともあります。山の現場では、分岐などのポイント毎、特に稜線に出る前に状況を確認・判断すれば、早い段階でのリスク回避につながります。いざというときに危険な状態か否かを自分で判断できるよう、天気に対する感覚を磨いておくことが大切です。

安全登山のために気象への理解は不可欠です。山行の3日前には天気予報をチェックし、アメダス等で雲や雨量を確認すること。できれば1週間ほど前から1500mや5500mの高層天気図を見て天候を予想することが推奨されました。現在は、天気予報も天気図もパソコンやスマホからオンラインで入手できます。おすすめのお天気アプリや気象に関する書籍のほか、国立登山研修所のサイトから無料でダウンロードできるデジタルブックについてもアドバイスをいただきました。

 日常生活で風速や雨量を意識し、「人間センサーになってください」という言葉で講義は締めくくられました。普段から意識して空をみること、を始めたいと思いました。

 その後、10月の六ツ石山山行について山行リーダーから説明がありました。行程中に前日の雨による危険箇所があるため予備日の山行は実施しないこと、クマの出没情報次第では中止になる可能性があることが伝えられ、ヘッドランプと防寒具を忘れないようにとの注意喚起もありました。

講座後も質問や仲間同士の会話が続き、大盛況のまま閉会しました。帰り道で、早速「雨」を体感した方もいたようです。
10月以降は後期の登山教室が始まります。さらなる登山技術の習得を目指し、安全第一で山を楽しんでください。
受講生の熱意が届き、次の山行が良い天気になりますように。

【推奨文献】
『登山者のための気象学』(※絶版)
『山岳気象入門』
『山岳気象大全』

13期登山教室 「山の天気」基礎から学ぶ山の気象

13期登山教室 「山の天気」

文:渡邉理恵子 写真:西山さより

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