04.東日原から日原林道、天祖山往復

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★★★★ コース NO.04

東日原から日原林道、天祖山往復

/豊かな自然林の尾根からたどる厳粛の山頂/
1.天祖山     1,723.3m

JR奥多摩駅←西東京バス27分→東日原バス停←50分→登山口(30分→←20分)尾根上(10分→←5分)ハタゴヤ(15分→←10分)→巡視道分岐(15分→←10分)雨量計(7分→←5分)大日天神(1時間10分→←40分)→社務所(5分→←3分)天祖山      (歩行時間/約6時間)
登山道グレード/★★★★★ 体力グレード/★★★★ 技術力グレード/★★★★ 総合コースグレード/★★★★

魅力尽きない、山慣れた人の山

 奥多摩の中でも天祖山は最奥の山のひとつだ。1723.3mという標高は14番目の高さ。三角点のある独立峰でもある。山頂には堂々とした天祖神社があり、登山道には小祠が点在し、立派な堂宇も残され、かつての表参道だったことを偲ばせている。尾根は自然林に覆われ、植林はわずかでしかない。それだけに四季折々の表情は非常に豊かで自然の多様性も高く、山歩きの興味が尽きない山だ。
 しかし、訪れる人は少ない。その理由は、まず登山口までのアプローチが小一時間かかること。登山口から山頂までは約3時間だが、山頂を越えて長沢背稜に出れば、西方面へ芋木ノドッケ経由で雲取山へ行くか、東方面ならタワ尾根を下るのが便利だが、小川谷林道が通行止めで使えない。七跳尾根を下っても同様だ。結局、横篶尾根まで行かなければならない。行程が非常に長くなるので、体力や脚力が求められる。余裕ある日帰り山行をするなら往復せざるをえない。
 さらに、登山道も決して整備されているとはいえず、大小の石が混在した歩きにくさは事故にも通じる。とくに気を付けたいのは日原林道からの急登で、登りはともかく、下りで滑・転落事故が起きている。上部の緩斜面では道迷いでビバークしたり、採石場に迷い込んで遭難したという事例もある。
 こうした理由からか天祖山は奥多摩のどの山域より静かで、じっくりと山歩きを楽しむには絶好のロケーションといえる。山歩きの経験を積んだ人を前提に東日原からの往復コースを紹介する。

登り始めからジグザグの急登

天祖山雨量計

東日原からはできる限り早く出発したい。目標の八丁橋まで約50分。登山口には立派な道標があるので、まず見落とすことはない。石交じりの歩きにくい道をトラバース気味に右に上がり、さらに折り返すと、谷をジグザグに横切るきれいな石積みの急登が見える。幅は1mもなく、石も転がっているので慎重に登ろう。途中、フィックスロープが3カ所現れる。そのあとはようやく斜度も落ち、右に長いトラバースを終えてひと登りすると「日原」と書かれた標識のある尾根上に出る。腰を下ろしてホッとひと息つける。ここまでの登山道は、地理院地図と実際とでは異なっている。
 急斜面から解放されて緩い斜面を行く。新緑、紅葉の季節には素晴らしい森の姿が見られるところだ。支尾根に、壊れかけたものを含めて3宇並んでいる小祠を見ながら緩く登って行くと、巨大なブナの倒木が現れて行く手をふさいでいる。正面のよく踏まれた道は水源巡視道なので入らないこと。

大日天神

間違える人が多いようだ。倒木をくぐって行くとハタゴヤの水場に出る。取材時は水が出ていなかった。ハタゴヤの位置は曖昧で、その名の通り登拝者の宿泊施設があったとすれば、もっと広い場所だと思うのだが。
 さらに数分で水源巡視道(旧日原林道)の分岐に出る。ここからやや急な斜面を100mほど登り切った明るい台地に、小河内ダムの管理運用に使われている天祖山観測局の雨量計がある。休憩するにはピッタリの場所だ。ほとんど平坦な道を行くと、正面に大日大神の堂宇が現れる。屋根は落ち、床は抜け、壁は崩れてほとんど荒廃。もったいないような気もする。
 堂宇の裏から標高差200mほどの急登が始まるが、地形図の1,355m地点で平坦となってひと息つける。大ナラノタワと呼ばれるあたりだ。ミズナラ、イヌブナ、ダケカンバ、ナナカマドなどの樹林の向こうに天祖山がやけに大きい。右手にはタワ尾根、左には石尾根の稜線が続いている。

緩急を繰り返して待望の山頂へ

社務所

 しばらくは快適な稜線漫歩が楽しめる。わずかに登ると、さらに尾根が広がり疎林の中を行くようになる。唐松平だ。広葉樹の落ち葉が道を隠しているので方向を見失わないようにしよう。道は歩きにくい。壊れた小祠を過ぎてしばらく行くと、道は右手の岩稜上を行くようになる。わずかな距離だが要注意だ。次に左から回り込むように登って行くと、林班界標36/37が立っている平坦な場所に出る。ここはバリエーションルートの大ブナ尾根のゴール地点にもなっている。フナの巨木に交じって立ち枯れの巨木も並び、開放的で石尾根の眺めがよい絶好の休憩ポイントだ。
 道は再び急登を交えるようになる。天祖山の表参道は、緩い箇所が少なく、基本的に急登が続く。これも入山者が少ない原因なのかも知れない。

天祖山

 そんな登りも15分ほど我慢すれば平坦地に出る。樹間に赤い屋根の社務所が見えてくる。周辺は草原状で、石尾根の向こうに富士山を望むこともできる。
 社務所の裏に回り、真新しい小祠を見ながら5分も登れば待望の山頂だ。周辺の樹木の伐採が進んだのか、枯損が進んだのか、かつては望めなかった展望がさらに開けて明るくなった。山頂には天祖神社があり、周辺を覆っているヒノキ林がさらに厳かな雰囲気に仕立てている。天祖神社は明治12年に天学教の奥宮として建立されたそうで、現在でも毎年8月1日には山開きが行われている。山好きでも、訪れる機会が少ないこの山は、奥多摩では貴重な存在かも知れない。
 帰路は往路をたどるが、落ち葉の下の石、木の根には気を遣いたい。広い尾根筋は二重山稜もあるので踏み跡を外さないよう注意を。行程の最後、尾根から離れてジグザグの道を日原林道へ向かうところは、疲れも出ている頃なので足元に集中して下ろう。

この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平29情複、第719号)

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