05.川乗橋から鳥屋戸尾根を登り蕎麦粒山、棒杭尾根

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★★★ コース NO.05

川乗橋から鳥屋戸尾根を登り蕎麦粒山、棒杭尾根

/鳥屋戸尾根を登って都・埼玉県境の峰で富士を遥拝/
1.笙ノ岩山  1,254.8m
2.蕎麦粒山  1,472.8m
3.仙元峠   1,444m

JR奥多摩駅→西東京バス15分→川乗橋バス停→2時間→笙ノ岩山→1時間30分→蕎麦粒山→20分→仙元峠→40分→棒杭尾根入口→1時間→長尾谷→40分→倉沢バス停→西東京バス20分→JR奥多摩駅
(歩行時間/約6時間10分)
登山道グレード/★★★ 体力グレード/★★★ 技術力グレード/★★ 総合コースグレード/★★★

蕎麦の粒にみたてた山容

東京都と埼玉県を分ける稜線につんと突き出て目を引く三角形の山がある。蕎麦の粒を立てたような形から蕎麦粒山と呼ばれる。さらにその稜線の先には古来、秩父と多摩をつないだ浅間みちが通る。
 JR奥多摩駅から東日原行のバスに乗り、およそ15分。川乗橋は日原川に支流の川乗谷が注ぎ込むところにある。ゲートの奥には川乗谷に沿って百尋の滝方面に向かう林道が延びている。林道に入ってまもなく、左手に「蕎麦粒山」を示す道標がある。鳥屋戸(トヤド)尾根の取り付きである。
 登りは手入れされたスギ林のなかの道で、木陰は涼しく土の道はやわらかく歩きやすい。コナラやツガが目につくようになり、急な登りが現れる。登り切った平らな場所はトヤド山(917m)。登り始めから1時間くらいなので、ひと休みするのにちょうどよい。その先も緩急を繰り返しながら登りは続く。イヌブナ、ミズナラ、ツガといった木々が頭上を覆い、その下にはアセビ。森が緑濃く豊かになってくる。

岩の空洞から笙の音が聞こえる?

塩地ノ頭付近

 岩の空洞から笙の音が聞こえる?  標高が1,000mを超えたあたり、大きな岩が現れ、急斜面を登りきると、左手の木の間越しに鷹ノ巣山が見えてくる。もうひとつ急登をこなすと、今度は川苔山が姿を現す。アセビのトンネルを抜け、さらに、もうひと登り。平らになったところが笙ノ岩山の山頂だ。中央に三等三角点の標石がある。ほとんど展望はないが、小広く落ち着く場所である。山名の由来は頂上近くに中が空洞になった大きな岩があり、風が吹くたびに笙のような音を出していたからというが、あたりに岩はなく頂はただ静寂に包まれているだけだ。

塩地ノ頭付近から大岳山を望む

 笙ノ岩山まではほぼ登り一方だったが、ここからは登り下りを繰り返しながら高度を上げて行く。登りきったところが塩地ノ頭(しおじのあたま/1,268m)。南の方向の展望に恵まれ、大岳山、御前山、そして三頭山と六ッ石山の間には富士山が頭を出している。

東京方面の眺め

 尾根が下りに転じると見晴らしはなくなる。八丁山(1,270m)などの細かい登り下りを繰り返したあとで、いったんぐいっと下るが、下りきる手前で尾根が直進と左の二方向に分かれている。どちらの尾根にも道がついているが、左を行く。松岩ノ頭(1,268m)を過ぎると、ブナとミズナラが目につくようになる。道は尾根の右を絡むように緩急を繰り返しながら登って行く。ヒノキ林に根元から胸くらいの高さまで鹿よけのネットが巻いてあるのが痛々しい。
 登り切った高みは長尾山(1,339m)というが、道は山頂の少し下を右側から巻いてしまう。さらに登るとちょっとした弛みに出る。ここには昔、弛みを通り抜けて行く渡り鳥を網で捕獲する鳥屋があったといわれ、尾根の名称のもとになったところである。
 斜面を登り切ると蕎麦粒山を巻く縦走路に出合う。右に行けば桂谷ノ頭(1,380m)との鞍部、左は仙元峠の手前にそれぞれ15分ほどで行くことができる。蕎麦粒山に行くには正面の道を登ることになる。最後の登りが疲れた脚にはこたえる。小岩の右を抜け、尾根の右を登って行くと10分ほどで三等三角点のある蕎麦粒山の山頂に出る。岩が地面からにょきにょきと突き出たような頂は、東側の展望に恵まれ、川苔山、都県境の稜線はもちろん、はるか遠く鉛筆の芯のような東京スカイツリーの姿までもが視界に飛び込んでくる。

木花咲耶姫命に迎えられる

蕎麦粒山山頂

 蕎麦粒山から仙元峠に向かう尾根は、西に向かって緩やかに下って行く。いったん鞍部で巻道の縦走路と合流するが、仙元峠へ行くにはすぐ先で縦走路と分かれて右の尾根道を登る。やや急な登りだが、10分もかからずに仙元峠の頂上に出てしまう。

仙元峠 浅間社

 峠は、秩父と多摩をむすぶ要所だった。上州から富士講の信者がこの道を登ってきたとき、はじめて富士山を拝むことができた場所である。大きなカエデの木の根元に、富士山のご神体である木花咲耶姫命(このはなさくやひめ)を祀る石祠が鎮座している。歴史の深さを感じるが、伐倒木が多いせいか、どこか荒れた印象が残る場所である。
 峠から西に向かう道は昔の街道だったこともあって、歩きやすい。縦走路に合流し、いくつか稜線上のピークを巻いて行くと、道は登り基調になり、やがて棒杭ノ頭(1,449m)の南側を巻くようになる。道の左に道標が現れる。道標そのものには表示されていないが、柱に黒マジックで「古棒杭尾根入口 倉沢へ」と書いてあり、棒杭尾根の入口と分かる。

棒杭尾根から倉沢谷へ

棒杭尾根 分岐道標

 棒杭尾根に入ると、道がしっかりしているのに驚かされる。どちらかというと踏み跡というよりも登山道に近いだろう。緩急を繰り返しながらブナやミズナラの美林を下ると、やがて道はヒノキ林に入る。標高1,100mくらいで、左に長尾谷の渓音が聞こえるようになり、間伐が済んだヒノキ植林地の急斜面をジグザグに下って行く。いつしかアセビの木が多くなってくる。標高900mあたりで尾根から外れ、長尾谷に面したスギ林の斜面を下るようになる。渓声と鳥の声だけが響く倉沢谷の上流・長尾谷の岸に下りつく。
 荒れた林道をたどる。鉄砲水による崩壊の跡を越え、魚留橋を渡ると車を止められるスペースがあり、その先は整備された林道を歩くことになる。対岸の石灰岩の大岩壁を見上げ、今は入洞が禁止されている倉沢鍾乳洞入口の茶店跡を見て倉沢谷沿いの道をひたすら下る。最後に倉沢谷のマイモーズと呼ばれる悪場の一角をのぞき込めば、日原街道はもう間近だ。

この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平29情複、第719号)

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