報告)安全登山講習会「フィールドでの事故等緊急時対応」

「フィールドでの事故等緊急時対応」講習会                村岡庸こ

 6月14日(土)、青梅の森いするぎ口前の広場にて上記講習会を実施した。講師は元東京都山岳連盟遭難対策委員・救助隊の建部雅史氏、講師補助の濱尚子氏の2名。

講師のお二人

参加は安全対策委員会川瀬委員長と受講者24名の計25名。曇り時々小雨の天候の中、講習会は午前9時から午後16時半まで盛りだくさんの内容で行われた。

 始めに問いかけられたのは山というフィールドの特異性について。緊急時対応の基本は一刻も早く医療機関に引き渡すことである。しかし山では、医療装備の不足や電波の不通、人手不足、安全な場所の確保の難しさなど、平地とは全く異なる環境であり、「山岳での事故対応の厳しさ」という講義のテーマに一気に引き込まれた。

ファーストエイド装備を披露

 まず5つの班に分かれて、班ごとに山行時に携行している医薬品のチェックをした。何をどのような目的で持ち歩いているのか説明をする。医薬品の量や種類は人それぞれ。一回も使用したことがないという人もいて、テープ類の粘着力がなくなっていたり、不必要に大量の医薬品を入れている人、絆創膏程度の人も見られた。定期的に中身の見直しが必要であると気づいた。その後講師から、持っていると良い医薬品の紹介があった。また、山行スタイルによって中身を変えると良いというアドバイスもあった。

 次に、「山行中に傷病者に出会ったらどうするか」と具体的な課題を与えられる。傷病者発見から状況評価(現場の状況を判断)、一次評価(傷病者の状態確認)、救助要請の方法、二次評価(応急処置)。それぞれの段階に応じて、講義と演習を交えて学んでいくスタイル。新しい知識に出会う喜びの中、すぐに実践をしなければならないという緊張で休む間もなく講習は進んでいった。傷病者を発見したときはすぐに駆け寄らず、リーダーは自分のパーティの安全を確認し、電波の有無、記録・通信・写真などの役割分担をしてから対応にあたるようにするということを学んだ。

 小雨降るなか昼食を摂り、午後は応急処置の仕方を学ぶ。まず熱中症や低体温症の原因や処置の仕方。低体温症の事故は冬よりも春や秋に多いようだ。次に三角巾を用いた頭部裂傷の応急処置、骨折の場合の処置は実技を交えて行う。新聞紙を利用する固定方法は実際にやってみると、程よい硬さで安心感があった。今後はザックに新聞紙を入れようと思った。

新聞紙の上から伸縮包帯を巻いていく

新聞紙を利用した手首の固定

 

                               そのあとは傷病者の搬送方法として、ドラッグ法とヒューマンチェーン法を実践するが、体格の違いや救助者の人数によっては、難しい場合もあると感じた。いざという時のために状況に応じて適切に使い分けることができる搬送法を知っていることは重要であると思った。

ドラッグ法の搬送

ヒューマンチェーン法の搬送

                     講習の最後はシナリオトレーニング。

総復習「シナリオトレーニング」傷病者を発見、頭部裂傷の手当て

講師から課題を与えられ、学んだことをもとに対処するいわば一日の総復習課題である。課題は3つあり、それぞれの班から事故者役が選ばれ、救助者側には状況のみ知らされる。事故者の状態を判断し、必要な対応をするというものだ。これはかなり難しく判断に迷うことばかり。実際にこのような場面に遭遇したときに救助を要請できるのか、応急処置はできるのか非常に不安になった。迷った場合は救急に電話して判断を仰ぐのも一つの手であると教わった。

 まとめとして講師から、マニュアル通りにやることが大切である。救急法のガイドラインは変わることがあるので、定期的に講習を受講することが必要である。救急要請するときは、はじめに「山岳遭難です」と告げることが大切である。講師補助の濱氏から補足として、マムシに噛まれた場合は何もせずに医療機関へ、蛇の写真もあると良いとアドバイスをいただいた。

 途中小雨が降り雨具を着用しての講習だったが、皆真剣にメモを取り実技に没頭し、充実した一日を過ごした。

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