報告)西上州「赤岩尾根」登攀・岩稜でのルートファインディング/多摩マウンテンジャム同好会

日   時

2025年5月11日(日)  天候 晴れ

参 加 者

TMJ7名  L近藤、SL稲富、中原、富永、清水(茂)、西山、小澤(拓)

行   程

集合6:00高幡不動駅北口及び八王子駅南口=鉱山住宅広場=上落合橋(車両デポ)=8:50鉱山住宅広場→9:20ルート折返し→9:30鉱山住宅→10:05(休憩1,200m)→10:40赤岩峠(休憩)~

10:50→11:25赤岩岳(1,570m)~12:07昼食休憩(1,532mちょっと広いピーク)12:20→13:00懸垂下降(1,539m)13:25→13:30(1,583m)→13:50最低鞍部→13:55休憩→14:18 P4(1,540m)→14:25 P31(1,515m)→14:40休憩~14:50→15:00 P32(1,550m)→15:25 P2(1,570m)→15:40 P1(1,589m)→16:30八丁峠→17:10上落合橋=(デポ車)=鉱山住宅広場=上落合橋(待機者Pickup)=鉱山住宅広場(解散)

報   告

〔多摩マウンテンジャム(以下TM J)設立に参加して以来何度か耳にする「西上州」?その言葉の後には「岩稜と藪漕ぎ」が修飾される。

近藤Lから計画書が届き「ハイグレードハイキング」との記載。なんか強そうだ。これまで のTM Jの活動 にクライミングジムでのトレーニングがあり、何となく想像が付くのだが、ワクワクの楽しみ半分、ドキドキの不安感半分の前日までであった。

近藤さんと稲富さんの企画は、常に私たちの経験値を高みに連れて行ってくれる。ステップアップ感が満載であり、大変ありがたい。

今回の集合場所・スタートは「鉱山住宅広場」?モヤッとしたスタートで始まる。前日、車両提供者のNHさんから現地集合場所のナビ登録ができないとの連絡が入る。自分も同乗する皆さんを集合場所にお連れするので車のナビに「鉱山住宅広場」を登録するも該当なし。前回の西上州の山行「大山・天丸山」の際に、「赤岩尾根」は「両神山」から延びる尾根だということを教えていただいていたので『山と高原地図』引っ張り出して「両神山」あたりを探す。(西上州というのか埼玉県なのか。どうやら県境の尾根が「赤岩尾根」のようだ。)地図には「鉱山住宅広場」など無い。地図記号工ニッチツの記載があるので「ニッチツ」をナビに入れてみる。「日窒資源開発本部・・・」自宅から66㎞?もっとある気がするがとりあえず登録。ナビ地図を広域にすると「南天山」と「両神山」の間がGのようだ。都内から中央道を下り勝沼ICを経て雁坂トンネルを秩父方面へ。秩父に入る手前を左折し北西に向かうと目的地Gに。

登山日当日、目的地に近づくと途中手掘りのような隧道を抜け廃屋が。昭和レトロな木製板壁にガラス窓枠も木枠の建築物が所どころ道沿いに現れる。暫くして目的地「鉱山住宅広場」に無事到着。下山口がスタート地点から離れているので車1台は下山口にデポし、もう1台の車でスタート場所へ戻り山行開始する作戦。

下山場所には登山届ポストがあり、計画書の投函もしたいので車2台で下山口の「上落合橋」へ。上落合橋は、「両神山」八丁峠への入り口なのでデポ車1台停めるにも一苦労。再び「鉱山住宅広場」に戻りいざ出陣。

到着してから目立って視界の入る真っ白な石灰の砂山高さ3~4mが朝の日に照らされ眩しく見続けていられない。その砂山と廃屋の間を抜け、地図にあった沢地形を清水さん先頭に目指す。斜面にはいきなり虎ロープ。踏み跡がハッキリしないフカフカで崩れそうな斜面。足元の悪い中を峠まで約1時間の登り。沢登りのツメのようだ。しんどいイメージに気合を入れなおしたところルート相違に気が付く。改めて地図読み。涸れ沢添いを登るイメージだけが頭にあり方角が違っていた。廃屋近くまで戻りその裏手にも沢状地形があった。こちらの踏み跡のほうが明瞭だ。その脇には廃屋跡のコンクリート基礎枠だけが残りその枠の中から木立が何本も伸びている。

赤岩尾根までは涸れ沢沿いの斜面を登り途中からジグザグに斜面を一歩一歩登る。そこの斜面にはハシリドコロが点々と。あずき色エンジ色をした袋状の花が下を向いて緑の葉の陰に咲いている。足元をよく見ると可愛らしい青紫色したフデリンドウも恥ずかし気にひっそりと咲いている。そんな中歩き続けること60分。赤岩峠の尾根に出る。汗ばんできた体全体に爽やかな涼しい風が通り抜け、なんとも心地よく快適であった。その尾根に向かって駆け上がってきた北風に「フォー」と声上げてしまう。ここで小休憩、登攀装備を各自が身に着ける。

ここからは右手方面、尾根道を東に進むのであるが、反対の左手側にはピラミダルな岩峰、西上州の怪峰「大ナゲシ」が堂々たる風情で静かに佇み我々を見ているようだ。「チャレンジを待っている。来るのはいつだ。」と招かれている気がした。「待ってろよ。」と心の中ででも呟ければ格好がよかったのだが、そこではそんな気持ちは起きずにこれから進むルートに視線は向いていた。

ここからが岩稜ルートの本番である。先頭を交代、ルンゼ状の狭い急斜面が目の前に、所どころ両手両足を使う四点歩行。石を落とさぬよう慎重に進む。“ラク!”すれば後ろのメンバーの目の前に石が落ちる。

急登を登りきると左右に分かれるコルに出た。左手の小岩峰に上がると先ず存在感がある「大ナゲシ」が高さ同じくして目の前に姿現す。北に浅間山、西にまだ白い八ヶ岳が峰々の向こうに見えた。コルに戻り右手側の木の根が絡まるルートを上へと進む。赤やベビーピンク色のアカヤシオやヤマツツジが遠くに近くに出てきた。艶やかな色合いからパワーをいただく。日の当たる稜線に出た。1,570m赤岩岳到着。

目の前に立ちはだかる岩肌を剥き出したルートはここから。腕を伸ばし、膝を上げ三点支持で垂直に高度を上げていく。途中先頭を交代し、岩稜の昇り降りを繰り返しスタートから3時間ほどが過ぎ12時に。尾根途中の1,532m地点で昼食を取る。この先には1,583mピークの前衛峰(ジャンダルム)が待ち受けている。その場ではCL、SLはロープを使用するか迷われたようであるが、ロープ無しで登攀。TMJが月1回行うジムトレが効いているのか、全員無事に壁をクリア。ジャンダルムからの下降は垂直の壁。下降器具を使い懸垂下降。各自が見事に無事下降完了。TMJの活動は個々のレベルを上げている。かつてはロープや器具の使い方もうろ覚えでベテラン組に手取り足取りであったヒヨコたちがすくすく目に見えて成長している?(のであろう。)

ジャン征圧あと1,583mの主峰の岩壁も征圧、しかもフリークライミングで。13時30分。ここから先は最低鞍部まで下る。登り返すこと数十m、周りにはアカヤシオやヤマツツジがまだまだ咲き誇る。

休憩の後、様々なアプローチからのピークがTMJを待ち受けている。小キレットをジャンプし飛び越えて進み、眺望たのしみつつ記念写真。手前には6mほどの岩壁。狭いチムニーがルート。CLがロープ無しで様子見に登ってしまいロープ不要と判断。一人ずつトライ。狭いうえに少々オーバーハング、手前に傾斜が被っている。ザックが引っ掛かるし、膝は上げられない。少しの引っ掛かりを手探り足探り。掌で突っ張り(ステミング)上体を押上げ、足でもステミング。メンバー全員難無くクリアしていく。

登りの「ゴジラの背」いわゆるナイフリッジ。暫く何十mも続くのであるがTMJの皆さんは不安なく登っていく。最後のピーク(1,589m)ではぐるっと360度の大展望だ。近くは西上州の岩稜、秩父の山々。八ヶ岳が意外と近くに見える。遠方には北アルプスが存在感たっぷり。見下ろせばスタート地点の鉱山住宅広場、地面が白いのが小さく見えた。高度感に「フォー!」鳥肌が背中に感じ、下山開始。

下山は、八丁峠へと尾根を下る。高度が下がってくると何か色のある動くものが目に入った。人影だ。安堵感からか表情に余裕が出る。八丁峠に近づくと両神山からの下山者たちが、緊張がほぐれたからなのか賑わっていた。だが逆方向から、我々TMJが下りてきたのに気が付くと、「とんでもないことをしている人たちがいる。」というような顔でこちらを見ている。鞍部の合流地点で振り返ると「この先 登山道未整備 滑落事故多し」の看板。そんな看板の向こうから人が来るとは思っていなかったのであろう。

車がデポしてある上落合まではあと少し。下り路の両側斜面には、まだ白い花を隠したコバイケイソウが所どころ群生している。見ごろはきっと素敵な登山道に仕上がっているのだろう。下山口にデポした車で二往復。全員が鉱山住宅広場に集まった。諸々の後始末が済んだらこちらで解散。帰路に就いた。ベテランのメンバー無しではリスク高く、立ち入ることが憚れる山へ今回もチャレンジできた。今後も沢登り、岩稜、お花見、風光明媚でロングな山行、と素敵な計画が続々と続くのかと思うと、待ち遠しくますますTMJには期待してしまう。

(文・小澤拓 写真・TMJ)

 

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