報告)猪熊氏の「観天望気」講演会とフィールドワーク開催 (番外編)御岳山集中登山

総務委員会 菊地美奈子

12月9日(土)に西国分寺の東京都立多摩図書館にて、山岳気象専門会社『ヤマテン』を運営する猪熊隆之氏による「気象遭難を防ぐための天気図の見方」講演会を開催し、翌10日(日)には御岳山近くの日ノ出山周辺を猪熊氏の話を聞きながら歩くフィールドワークを実施した。講演会には一般の方も含め70名の方々が、フィールドワークには26名が参加した。

1日目の講演会でまず初めに話されたのは、「遭難をしないための登山」に必要な【PDCAサイクルの実行】が大切だということ。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つの中でも特にP(計画)が大切で、自分が登る山やルートの特性を知り、天気図や気象情報からのリスク評価が重要だと話された。正しい情報を選び取り、更に天気図が読めればリスク回避に繋がるということから天気図の見方へと話が展開していった。海や山の地形、等圧線の向き(風向)や間隔(風速)等を様々な天気図より説明してくださったが、きちんと理解するには時間がかかりそうだ。ただ、過去に起こった気象遭難時の天候を天気図の観点から学べたのは非常に興味深かった。天気予報の天気マークや気温を確認するだけでは不十分で、地形・降水確率・風向・風速を調べて、正しい登山ルートを確立することがいかに大切なことかよくわかった。

後半は登山中に必要な「観天望気」で必要とされる「雲の種類」や「雷の回避法」等について学んだ。講演時間は3時間とかなり長かったが、講演会後のアンケートには「3時間が短いと感じられた」「まだまだ聞きたかった」と猪熊氏の話に引き込まれ、あっという間に時間が過ぎたという感想が多く寄せられた。

2日目のフィールドワークの天気はこれ以上ない快晴で、雲といえば数本飛行機雲が見られたぐらい。いろいろな雲を見て猪熊氏の話を聞きたかったので、今回ほど快晴が恨めしく思えた山行はなかった。それでも当日の天気図を見ながら今後の天気の推移を予測したり、リスクマネジメントマップや十種の雲の写真が載った資料を見ながら雲の特性を聞いたり、風の向きを感じながらのフィールドワークは楽しかった。今後は足元ばかりを見て歩くのではなく、時折空を見上げて雲を観察しながらの山行が増えること間違いなしだ。

 

総務委員会 辻正人(日本山岳会会報2024年1月号掲載 )

東京多摩支部では、山岳気象の第一人者である猪熊隆之氏をお迎えして、「山の天気ライブ授業」を行った。1日目は3時間の講義、2日目は奥多摩の御岳山・日の出山で観天望気のフィールドワークを行った。なお、この企画は、日本山岳会支部事業委員会からの支援を受けて実施された。

12月9日の講義は東京都立多摩図書館のセミナールームで開催され、会員以外の方も含めて71人が参加した。猪熊氏は資料「気象遭難を防ぐための天気の見方」に基づいて講義を進めた。一般の天気予報は平地や山麓のもので、山頂と山麓の天候が異なるときに気象遭難が多発しやすく、遭難を避けるために天気について学ぶ必要があるとのこと。また、登山ルートによっても気象リスクは異なるので、安全なルートを選択する必要があると述べた。

猪熊氏の卓越した点は、予報に地形を織り込んだことだろう。山の天気の基本として、天気が崩れるのは雲ができるからであり、上昇気流が発生する場所、特に湿った海側から吹く風の風上側の山で天気が崩れるので注意が必要とのこと。山では平均風速15m/s以上の時にリスクが大きくなるという。風は天気図から風向きと強さを読み取れ、危険な風が吹く状況を天気図と実際の事例で解説した。実際、数件の低体温症遭難が発生した日の気圧配置は同じだったことを示した。登山中は観天望気が重要とのことで雲の種類を紹介した。落雷と局地豪雨は上空に寒気、下層に暖かく湿った空気がある場合に起こるそうで、落雷からの身の守り方も紹介した。危険な状態を察知したときの引き返しポイントの設定も大事とのこと。関東甲信越の山の配置と天気図から風の向きが予想でき、特定の山域の気象の危険性が示された。広域的に予想を立てられることに驚いた。

翌10日は御岳山駅前広場に30名が集合した。資料「空見リスクマネジメントマップ」、「十種雲形」、「直近の天気図」が配布された。まずは猪熊講師から、「何か気候で気が付いたことがありますか」と問われ、「山麓よりここの方が気温が温かい」という声があった。講師は我が意を得たりという感じで、「放射冷却で下の気温が低く、上が暖かい極めて安定した天候」と解説し、山風が吹き下ろす安定した気候を体感することができた。これからは、外気の温度から気象状況を感じ取ることが習慣になりそうだ。

ここから日の出山を経て三ツ沢までの5カ所の観測ポイントで、空と雲を観察して観天望気の予定だった。しかし、頭上には蒼天が広がり、絶好の山行日和だった・・・。つまり、空には数本の飛行機雲が見えたものの、期待した低・中・高層雲は、一片も見えなかった。講師によれば、これは観天望気に「致命的」とのことだった。そのようなわけで、雲に基づいた観天望気は十分にはできなかったが、講師のお人柄を反映するような和気藹々とした雰囲気で、歴史も含めてもろもろのフィールドワークを楽しんだ。

2日間で、気象の重要性と観測方法、それに基づく行動指針を学んだ。今後の山行に生かしたい。

 

番外編(気象実習前に御岳山集中登山)

2日目のフィールドワークに先立ち、集合時間が10:20であることを利用して、3隊が御岳山を目指して集中登山をおこなった。

1.鍋割山バリエーション 山根他2名

5:55鳩ノ巣駅―6:50鉄塔―7:05城山―7:35大楢峠―7:50中目木山―8:10白薙窪ノ頭―8:25黒薙窪ノ頭―8:40鍋割山―8:55奥の院―9:25長尾平―9:50御岳山駅

鳩ノ巣駅至近に城山(ジョウヤマ)がある。城山から大楢峠を踏んで尾根筋をたどりダイレクトに鍋割山に向かうルートをたどることにした。鳩ノ巣駅を出発し、雲仙橋を渡るとすぐに城山方面への石段。ここからふみ跡をたどる。途中レンガ造りの祠があり、分岐になってるが、祠の裏手を回り込めば尾根にのれる。鉄塔を通過してほどなくして城山山頂(立ち木に案内表記)。小楢峠・タワ山(簡易標識)を経て大楢峠。海沢方面と御岳山方面の分岐がある。御岳山方面の登山道はトラロープが張られ

通行止めになっていた。トラロープをくぐりしばらく行くと右方向、鍋割山北尾根へ向かう小さな標識があり、ここを辿って鍋割山北尾根にのる。中目木山(836m)、白薙窪ノ頭(標識は黒薙窪ノ頭)、黒薙窪ノ頭(961m)それぞれの標識を確認しながら進む。途上には奉納された石造りの祠や石柱があった。鍋割山北尾根は永らく踏まれてきた古道の一つなのだろう。そうこうするうちに鍋割山山頂。一般登山道に合流。ここからは多くの登山者と行き交い、時には交歓しながら御嶽神社での挨拶をすませ御岳山駅に到着した。

2.丹三郎尾根−大塚山

【参加者】5名/植草、清水、中原、中村(敦)、村岡

7:05古里駅→7:30丹三郎尾根登山口→8:35丹三郎山→9:30大塚山→9:45御岳ロープウェイ山頂駅

丹三郎尾根登山口から急登を登ること1時間で尾根に上がる。丹三郎山頂をピストン。中ノ棒山までは登り甲斐のある斜度。汗が滲む。ヘリコプターとサイレン音がけたたましく響いていた。大塚山手前でトレラン大会スタッフに会う。大塚山山頂でパチリ。すぐに集合場所へ。

 

3.御岳山北東尾根プチバリ

【参加者】3名/野口(い)、高岡、中島

8時前、御嶽駅から臨時バスがあり、5分ほど乗って、琴沢橋BSで下車(標高280m)。琴沢林道を進むが、北東尾根の取りつきがわからず、少し戻って人家の方に挨拶して取りつく。最初は踏み跡が錯綜していてわかりにくい。崖のような急な斜面を登っていくと、道がはっきりしてきた。見はらしのある場所では北西にケーブルが見えた。小1時間登って、木立の中の703ピークで一休み。少し下って御岳山表参道(713 m)はすぐだった。表参道は舗装された杉並木の道で、江戸初期に開かれた道だけあって石碑が多かった。「あんまがえし」は盲目のあんまが山頂と間違えて帰った場所だそうだ。表参道合流点から御岳山ケーブル駅まで標高差はあまりないが、道は南西に大きくV字型に蛇行していて長かった。9:50、御岳山ケーブル駅(831m)に到着。

 

 

 

 

 

 

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