★★ コース NO.14
軍畑駅から青梅丘陵を石神前駅 /歴史の名残を求めて緑濃い丘陵を行く/
1.雷電山 494m
2.辛垣山 457m 3.三方山 454.3m JR軍畑駅→40分→登山口→40分→雷電山→20分→尾根道・巻道分岐→10分→辛垣山→10分→名郷峠→30分→ノスザワ峠→10分→三方山→10分→展望台→10分→石神前駅分岐→40分→石神社・JR石神前駅
(歩行時間/約3時間40分) 登山道グレード/★★ 体力グレード/★★ 技術力グレード/★★ 総合コースグレード/★★
|
JR軍畑駅から旧鎌倉街道を行く
JR青梅線の北側に標高400mほどの起伏に富んだ緩やかな丘陵が広がっている。このあたりは古来、戦いの場とされ尾根筋にいくつかの城が建ったが、戦が終わると江戸の木材・石灰などの供給の場となった。尾根筋は、数百年ののち市民のハイキングコースに生まれ変わり、東京近郊の市民に憩いと安らぎをもたらしている。そんな丘陵の道を西の榎峠から雷電山、辛垣山、三方山を経て、石神前駅まで歩いてみよう。
軍畑(いくさばた)駅(※)で下車し、左へ線路沿いの道を行く。踏切を渡って坂を下ると都道に出る。かつて鎌倉街道山の道といわれた道だ。ここを左に向かう。
(※)駅前の売店ではパンや飲み物が買える。
草木染の工房を横に見て都道を歩いていくと、やがて平溝橋で左に高水三山への道を分ける。そこから都道は登りにかかり、榎峠を越えて飯能や成木方面へ向かうが、スピードを出して下ってくる自動車が多いので気を遣う。道路を登ること20分ほど、榎峠の少し手前の右側に青梅丘陵への入口がある。ここは道路を右に渡らなければならないが、車に十分を気を付けて渡りたい
登山口からはいきなり登りになり汗をかかせられる。こぶを2つほど登り下りし、さらにもうひと登りすると道のすぐ右側の上が雷電山の頂上だ。雷電山の名称は、
山頂からは木の間越しに採石場が見える。もとは大正時代に始められた石灰石の採掘工場で、採れた石灰石は索道で雷電山を越え、インクラインで二俣尾駅から分かれていた引き込み線まで搬送したそうだ。その後、昭和45年からは砂岩の採石が始められ、今は奥多摩工業の主力砕石工場の一つとなっている。山名の由来は、青梅が干害に見舞われたとき、山上で雨乞いの祈祷を行なったことに由来するという。雨乞いのために祀った雷電社という小さな神社があったというが、痕跡はない。
三田氏の山城があった辛垣山
雷電山から下の道に戻り、急な坂を下ると、道は緩やかになり、尾根上をたどったり、巻いたりしなが

雷電山山頂
ら南東に向かう。その途中の右側に空堀のように見える切通しがある。石灰石を運ぶために人工的に掘削したところだ。付近に大小の石灰石がいくつも転がっている。小さな尾根を乗り越し急下降すると二俣尾駅方面への道を示す古い道標が立っている。この道は一部に薮の深いところがあるが、踏跡もしっかりしているので緊急時のエスケープ道に使える。駅まで約30分。
コースをさらに下ると、辛垣山・辛垣城跡へ行く道と巻道の分岐点に出る。道標を見落としがちな場所だ。
左の辛垣山方面に行く道は巻き道に比べるとやや薄めだ。最初は緩やかだが空堀らしい窪みを越えると短い急登となり、スギ林の中の狭い山頂に着く。展望も遺跡もなく、小さく辛垣山と書いた標識があるのみだ。春はシャガの花があたり一面に咲く。そのまま道を行くとすぐにすり鉢状の辛垣城跡に着く。解説板には「当時の面影は残っていないが、空堀や土塁がわずか残っている。永禄6(1563)年に八王子・滝山城の北条氏照に攻められ落城。城主の三田綱秀は岩槻城に落ち延び自害した」とある。
三田氏は古くからこの地の豪族だった。奈良時代、武蔵の国に国府・国分寺が設置され、膨大な建築資材が必要になると青梅は木材・石材の供給基地となり、それらの資材は多摩川の水運で国府が建設された府中まで運ばれた。その利権を一手に握っていた三田氏は勢力を伸ばし、時代が下ると鎌倉幕府のご家人にも名を連ね、室町時代には山内上杉氏の支配下にはいった。戦国時代に入るといったん後北条氏についたが、三田綱秀の時代に再び山内上杉氏配下の長尾景虎(のちの上杉謙信)に寝返り、後北条氏に抵抗した。しかし最後は1563年にこの場所、辛垣城が北条氏照に攻め落とされ滅亡した。
- 辛垣山遺構
- 物見山
- ノスザワ峠
三方山には青梅丘陵唯一の三角点
城跡から急な道を下ると、先ほど分かれた巻道と合流してすぐ名郷(なごう)峠に着く。峠には小さな祠と御清水と書かれた水が入ったペットボトルが数本置かれている。峠は二俣尾の集落と成木川沿いの正沢集落を結ぶ最短コースだが、正沢集落方面への道は草木に覆われ、道跡は定かではない。
急な坂を登り、ピークの右側を巻くと送電鉄塔の横に出る。こことその先の巻き道右手のピークはこのコース唯一の展望が開ける場所だ。その先は緩やかな尾根道を行く。春には、ツツジやコアジサイなどが咲いているところだ。この付近はニホンカモシカが定住している森で、尾根上でばったり出くわしてにらめっこしたという話もよく聞く。
登り返してノスザワ峠に着く。スギとヒノキの樹林の中、小広く広がったコブで、とても落ち着く場所だ。南の石神社付近から登って来る道と北の栗平集落をつなぐ峠だが南側の道は廃道に近い。
いったん下り、コブの右手を巻くと三方山の登りにかかる。左に巻道を分けると、ほんのわずかで山頂だ。山頂にはこのコースで唯一の三角点(二等三角点「二俣尾」)がある。展望のない山頂だが雰囲気は悪くない、もっと知られていい山だ。以前は石神入山と称されたこともあったらしい。
山頂の東側をわずかに下るとすぐに巻道に出る。さらに少し歩くと、古い丸太のベンチが置かれた場所に出る。10年前は山座同定が楽しい場所だったが、今は樹が伸びてしまって全く展望はない。ここから見えた男体山の展望写真が掲示してあるが、10年の歳月を思わせるだけで、今はむなしい。
この先のコブで栗平集落へつながる林道へ下る道を分ける。ここは以前、高圧電線の鉄塔が立っていた名残で、少し展望が開ける。そこから5分ほど先、石神前駅への道標のある分岐で鉄道公園まで延びる青梅丘陵ハイキングコースから右に分かれ、石神前駅方面に下る道に入る。最初は急な下りだが、沢筋に出ると道は沢沿いの緩やかな道になる。道はまもなく幅の広い平坦な林道となり、のんびりと歩いていくと小鳥の声が林内に響く。スギとヒノキの木陰の道は森林浴に最適だ。青梅線の踏切を渡り、青梅街道を右に向かうとすぐ右手に石神社がある。歳老いた銀杏の木が神社の歴史を思わせる。神社を西側から出ると石神前の駅が目の前にある。
- 三方山全景
- 三方山三角点
- 石神前駅分岐
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平29情複、第719号)