08.水根からトオノクボ、イソツネ山、境集落

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★★★★★ コース NO.8

水根からトオノクボ、イソツネ山、境集落

/カヤトの展望地から人知れぬひっそりとした山頂へ/
1.イソツネ山   846.1m

JR奥多摩駅→西東京バス15分→水根バス停→35分→産土神社→1時間25分→トオノクボ→15分→電波反射板→10分→尾根分岐→10分→沖ノ指→15分→山ノ神→10分→イソツネ山分岐→イソツネ山往復30→イソツネ山分岐→50分→境集落→5分→境橋バス停→西東京バス8分→JR奥多摩駅 (歩行時間/約4時間25分)
登山道グレード/★★★★★ 体力グレード/★★★ 技術力グレード/★★★★★ 総合コースグレード/★★★★★

青目立不動尊からの眺めは必見

青目不動から見た奥多摩湖

 イソツネ山の名前を知っている人は少ないだろう。奥多摩をかなり歩き回っている人でないと、興味を持つこともないかもしれない。アプローチもバリエーションルートとなるし、ルートファインディングが求められる部分もある。一般コースのつもりで気軽に行ける山ではない。山歩きの経験の長い人、地形と地図が読める人、コンパスが使える人にお勧めの山だ。GPSがあれば、さらに安心感は高まる。北面に広がる伐採地は、夏季は背丈を超える灌木、冬季は一面のカヤトとなって視界が遮られる。そのうえトゲのある灌木が混在するので注意が必要だ。適期としては、12月から2月あたりだろう。

産土神社

 水根バス停から、水根林道への道をたどる。トオノクボまでは六ッ石山へのコースと同じで道標に従えば迷うところはない。東京都水道局の配水所で右折すると右手に奥多摩湖が一望できる。その先の青目立不動尊は道路からわずかに奥まっているが、奥多摩湖、御前山、倉戸山、七ッ石山、石尾根方面の展望が素晴らしく、ぜひ立ち寄ってみたい。
 むかし道の道標を右に見送って行くと六ッ石山への登山口がある。人家の間を抜けるので行動には配慮したい。

989m地点

植林帯に入ると真っ赤な鳥居の産土(うぶすな)神社が現れる。主神は、山の安全、土地の平安を司る大山祇命(おおやまづみのみこと)とのこと。登山安全を祈願しておこう。神社からやや急な登りが始まる。左手の樹間には榧ノ木山から倉戸山の稜線が見え、右が植林、左がコナラやミズナラの自然林の中をひたすら登る。周囲が明るくなってひと登りすれば989m地点に到着する。産土神社から標高差で約300m。明るく開けた平坦な場所は休憩にぴったりだ。
 ここから再び植林の中の登りとなり、小さな社を過ぎるあたりから本格的な急登となる。岩も出てきて大きな段差の登りが続く。そんな登りも道標を過ぎた1,200m付近から緩くなり、自然林の中をトラバースしてトオノクボに到着する。トオノクボは開放的な明るさに満ちていて気持ちのよいところだ。

眺めのよい防火帯をのんびり下る

分岐

 幅広い防火帯を左に登れば六ッ石山だが、イソツネ山へは右へ下る。防火帯はどこでも歩けるが、足元には注意したい。木の枝が低く張り出しているので頭上にも注意だ。左手に大きな山容を見せているのが石尾根の三ノ木戸山。その右奥には本仁田山と瘤高山が見える。1/25000地形図には1,150m地点で南に下る道が記されているが、廃道になったようだ。尾根通しに下ると電波反射板が現れる。電波の「通り道」は切り通しになっていて、はるか下に小河内ダムの堰堤が見える。さらに下ると植林帯に行く手を阻まれる。テープが巻かれたヒノキがあり、イソツネ山への下り道であることを教えている。何らかの標識だったと思われるスチールの支柱も立っている。

沖ノ指

 ルートは右手の植林帯と疎林の境目を下る。滑りやすい斜面に踏み跡はほとんどないが、70mほど下れば平坦になって明瞭な踏み跡が出てくる。踏み跡は右手の高みを左に巻いているが、この高みが沖ノ指(おきのさす/1,041m)だ。適当に岩場を越えて行くと山頂に着く。周囲はコナラ、ミズナラなどの広葉樹。荒れた雰囲気の山頂には赤い杭が打たれている。
 イソツネ山へは往路を戻ってもいいが、そのまま山頂を東へ進む。足元には充分注意したい。右手の樹間に奥多摩湖を見ながら数分も下れば、沖ノ指を巻いている踏み跡に出る。道といってもいいような踏み跡をたどれば山ノ神に着く。どんな由緒があるのか分からないが、奥多摩には、こんなところに、という場所に社や祠が見られ、人と山との深い関わりを想起させる。

眼下にカヤトの大展望

神社

 山の神からわずかに下ると、一気に展望が開ける。このコースのハイライトだ。左にどっしり構えるのは三ノ木戸山。そこからなだらかなスカイラインを描く石尾根の末端。その向こうに本仁田山。大休場尾根、花折戸尾根、ゴンザス尾根が落ちている。高水三山方面なども見渡せる。眼下の伐採跡は、冬季はカヤ、夏季は一面の灌木帯となる。しばし景観を楽しんだら、この伐採跡を通り抜けるがルートファインディングに気を付けよう。目標とするのは伐採跡にぽつんと残された樹林帯の右。獣道が縦横に走り、方向を惑わされやすいので慎重に目標を定めながら進もう。その年や時期によってカヤの生育は異なる。カヤは、ススキ、スゲなどの総称。カヤトはその群生地をいう。
 目標地点に着いたら、右の樹林の中に入る。地図と地形を見極めて、はっきりしない尾根筋を外さないように進めば、明瞭な尾根上の踏み跡となる。岩場を越え、冬でも煩わしいヤブを抜けて行くと、ふと小広い平坦地に飛び出す。正面の樹林の中を探ると、山名板の架かった木の根方に三等三角点が見つかる。平坦な山頂は、祭礼でも開かれていたかような雰囲気が漂う。イソツネという山名の由来も分からないが、沖ノ指の「沖」、イソツネの「イソ=磯?」を考えると、それぞれの山の間に何やら関係があるような気がしてならない。そうした意味からも、このふたつの山は興味深い。

神社下の展望地

 往路を戻る。岩場は右から回り込むこともできる。カヤトに戻ったら、右手の樹林に沿うように進む。ここも獣道が縦横に走るので注意しよう。ネットのフェンスが出てきたらそれに従って下る。このカヤトには2軒の人家があるが、上の1軒は廃屋だ。途中、モノレールを見るが、今は使われていないそうだ。
 2軒目の人家脇から踏み跡ははっきりした道になる。樹林に入り、ジグザグに下ると境集落の上のエリアに出る。こちらの住民も1人だという。廃線となった水根貨物線の鉄橋の下をくぐれば一般道路も近い。右にたどれば境橋のバス停まで数分だ。時間に余裕があれば、左の道を選んで、むかし道をのんびりと奥多摩駅まで歩くのもいいだろう。

この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平29情複、第719号)

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